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いい寝!フォーラム・トップ > Contents > 脳科学から眠りのサイエンスを学ぶ「眠りが脳を効率化させている」

脳科学から眠りのサイエンスを学ぶ。良い眠りのためには、眠りの仕組みを学ぶことも大切。なぜ眠りは必要なのか。そして眠りはどうコントロールされているのか。覚醒を制御するオレキシンという物質の発見者であり、睡眠と覚醒の仕組みを巡って最先端の研究を続けている金沢大学医薬保健研究域医学系の櫻井武教授に伺いました。

1.眠りが脳を効率化させている

睡眠がなぜ必要かという疑問に、科学的に完全な答えは残念ながらまだ見つかっていません。でも、確実に言えるのは、脳の記憶の強化には眠りが欠かせないということ。睡眠は「脳を休めること」と思っている人も多いのですが、逆に休めるどころか睡眠中にも脳は活発に活動して記憶を強化しているのです。

脳は神経細胞の固まりで、神経細胞同士はシナプスという接触部を介してネットワークを作っています。特定の神経細胞とシナプスを使うほど記憶は強化されますが、寝ている間に脳でシナプスを整理してネットワークを効率化する作業が行われていることが最近わかってきました。これを「シナプス恒常性」と言います。

睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。レム睡眠は瞼の下で眼球が高速で動いている眠りで、眠り全体の20%ほどを占めます。それ以外がノンレム睡眠です。シナプスの整理はこのノンレム睡眠の間に行われていると考えられています。

起きているときは脳には次々と情報が入力されており、それにつれてシナプスはどんどん増えてきます。パソコンの操作にたとえると、作業を続けてデスクトップを新たに作成されたファイルが埋め尽くしているイメージです。

ビジネスパーソンが夕方になってデスクトップ上のファイルを整理するように、脳も日中に入力された情報を睡眠中に整理して記憶を強化しています。増えすぎた不要なシナプスを削り、神経細胞同士の結びつきを最適化するために新たなシナプスを増やしたりするのです。パソコン上のファイルが整理されると情報が取り出しやすくなるように、睡眠中に神経細胞同士の結びつきが最適化されると記憶が強化されます。

パソコンのメモリーが有限なように、1個の神経細胞が処理できる情報は有限ですし、シナプスを作る空間も有限です。脳の限られた学習能力を有効活用するために、眠りは必要不可欠なのです。

櫻井武

櫻井武(さくらい・たけし)

金沢大学医薬保健研究域医学系教授、医師、医学博士。
1964年、東京都生まれ。筑波大学大学院医学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、筑波大学基礎医学系講師、テキサス大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授兼科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業グループリーターを経て、現職。98年、覚醒を制御する神経ペプチド、オレキシンを発見。睡眠と覚醒、摂食行動、情動などを制御する仕組みの解明を目指し、最先端の研究を続けている。

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